断熱塗料の落とし穴!冬に効果を感じられない理由
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工場や倉庫など大きな建物の寒さ対策として、断熱塗料の使用を検討している方も多いのではないでしょうか。
断熱塗料は、夏は暑さを、そして冬は寒さをやわらげる効果があるといわれています。
しかし、結論から言いますと、断熱塗料だけでは満足のいく断熱効果を得ることは難しいでしょう。特に寒冷地域、例えば北海道、東北地方や信州地方などでは、断熱塗料に頼らない方がおすすめです。
本記事では、断熱塗料が冬の寒さ対策に不十分である理由を説明するとともに、工場や倉庫に適した防寒対策をご紹介します。
断熱塗料では冬の寒さ対策に限界がある
断熱塗料は、熱が伝わりにくい特長を持つ塗料です。室内の温度上昇を防ぐことが目的ですが、防寒にもつながるとPRされています。なぜなら「断熱」は、低温の外気と高温の建物間の熱移動を防ぐからです。
しかし、断熱塗料には防寒効果が期待されていますが、断熱の理屈からすると、冬の寒さ対策には向いていません。
その理由は、断熱塗料の厚さ。
1mm程度の厚さでは、どんなに熱伝導率が低い優れた断熱材でも、熱の移動を十分に抑えることが出来ないからです。物質の中の熱の流れにくさを数値化したものを「熱抵抗値」といいます。数値が大きいほど断熱性がよいことになり、[熱抵抗値] = [厚さ] ÷ [熱伝導率]で計算されます。断熱材の厚さが少ないと断熱性能が発揮できないことが判ります。
こんなうたい文句には注意!業者の説明に惑わされないコツ
断熱塗料は冬の寒さ対策には物足りないと頭では理解できるものの、業者の説明を聞くと、「ひょっとしたら効果があるかもしれない」と期待してしまうかもしれません。
イメージにまどわされないためにも、以下の点に留意しましょう。
よくあるうたい文句に注意する
「熱を伝えない物質を使用している」というのは、物質的にはあり得ないことです。
仮にそのような物質が塗料に配合されていたとしても、十分な断熱効果を得るには厚みが足りません。
「特殊セラミック」「特殊バインダー」など、魔法の素材をイメージするような表現や「宇宙ロケットに用いられている塗料」などの非日常的な商品名も要注意です。
こうした表現やネーミングの商品には、物質の原理が明記されていない場合がほとんどです。
担当者に質問する
商品名やセールストークにまどわされないためにも、担当者に対して製品の具体的な仕組みについて質問してみましょう。
聞こえがいい用語に対して、根拠があいまいな説明が返ってきたら、その時点で「怪しい」と気づけるはずです。
何年か前の話になりますが、ある展示場で「熱交換塗料」といった名前の、建屋内を涼しくする塗料を目にしました。
担当している方に「熱交換とはどのような原理ですか」とたずねたところ、その方は「太陽光線が塗料の表面にあたると、太陽光の赤外線の一部が熱エネルギーに変わります」と最初におっしゃいました。
その原理は理解できますが、問題は次です。
「熱はその後塗膜内で分散・移動します。その熱が塗膜内に入っている特殊エキスに接触すると、塗料に含まれている原子や分子の運動を活発化させるため、エネルギーが消費され熱が消えます」と説明を続けたのです。
やや物理学的な話になってしまいますが、物理学の常識では原子や分子の運動が活発になると、その物質の熱エネルギーが増加し高温になります。
真逆の物理が生じるというその魔法のエキスを信じるかどうかは個人の自由ですが、目新しい素材の説明には、物理的な証明や説明が望まれるところです。
冬に建物内が寒くなる理由とは
工場や倉庫の寒さ対策を考える際は、建物内が寒くなる理由について知ることが大切です。 断熱塗料だけでは寒さを防ぐのは難しいということがよく分かり、各建物に適した対策を選びやすくなります。
ここでは、主な理由を3つご紹介します。
理由①:室内の温度差が生じやすいから
ご存じかと思いますが、冷たい空気は下に、暖かい空気は上に上がります。大きな建物では、床から天井までの高さが5メートル以上にもなり、暖かい空気は作業している人からは遠く離れたところにたまりがちです。
つまり、大きな建物では、室内の暖房を強化しても十分には暖かくなりにくいのです。
理由②:床にコンクリートを使っているから
工場や倉庫などの建物は、耐久性を重視して床をコンクリートにしているところも少なくありません。コンクリートには、丈夫であると同時に熱伝導率が高いという特徴があるため、コンクリートの床は、室内の熱を奪って外に熱を逃しやすく、室内が暖まりにくい原因の一つと考えられます。
理由③:建物の隙間から熱が逃げてしまうから
ほとんどの建物には、多少なりとも隙間があります。室内の熱は隙間から外に逃げますが、隙間の数が多ければ多いほど逃げる熱の量が増え、暖房をしっかりしても室内は暖まりにくくなります。
倉庫や工場などの大きな建物で熱が逃げやすい箇所は、
- ・一枚ものの屋根
- ・壁
- ・ガラス
- ・窓
- ・扉
- ・シャッター
- ・開口部
- ・床
など。
思った以上に多くあります。
熱が逃げやすい箇所や隙間を把握して対処することが、冬場の建物内を適温に保つポイントと言えます。
工場や倉庫などに適した3つの寒さ対策
大きな建物の内部を暖かく保つ主な方法として、建物の隙間をふさぐ以外に、
- ①空調設備の設置
- ②シーリングファンの設置
- ③断熱材を使った断熱対策
の3つが挙げられます。
①空調設備の設置
建物内の温度調整を自動的に行える空調設備は、寒さを和らげる対策として有効です。
工場や倉庫向けの大きな空調設備であれば、建物内を短時間で暖めるだけでなく、湿度や気流を調整し空気洗浄も行えるでしょう。
最新の空調設備は、温度管理が容易にできかつ気流や温度のムラを極力抑えるよう設計されていて、従来モデルよりも性能の高いものがほとんどです。
②シーリングファンの設置
冬場に生じやすい建物内の空気の温度差を緩和するには、シーリングファンがおすすめです。
シーリングファンは、天井に設置するタイプのファンで、空気を循環させることによって天井に熱がたまるのを防ぎます。建物内の温度差を小さくすることで、室内を適温に保つことが期待できるほか、結露対策にも有効です。
③断熱材を使った断熱対策
熱伝導率が低く、ある程度の厚みを持つ建材のことを断熱材といいます。
断熱材は、空気層を形成するのに十分な厚みがあるうえ、屋根や壁など建物のさまざまな部分に使用でき、熱が逃げる箇所の補強素材として最適です。
断熱材は、
- ・発泡プラスチック系
- ・繊維系(無機繊維系)
- ・天然素材系
の3種類に大きく分けられます。
それぞれの特徴を一覧表にまとめました。
断熱材選びに迷う場合は、専門家に相談し建物に適した素材を選ぶことをおすすめします。
断熱効果のある施工で厳しい寒さに備えましょう
防寒という意味において有効なのは、建物全体の断熱性を高められる断熱材を使った寒さ対策です。
断熱材の中には、断熱塗料の100倍にあたる100mm程度の厚さを持つものもあります。厚みがある分、断熱塗料よりも断熱効果が期待できます。
断熱材の効果は使用する素材によりますが、施工内容も大きく影響します。
以下は防寒に効果的な断熱施工の例です。
- ・建物全体:気密性の高い素材を使い、建物をできるだけ密閉した状態にする(高気密化)
- ・窓:複層ガラスや樹脂サッシを用いて気密性を高める
- ・床:コンクリートの床下に空気層を設け、室内の熱を逃げにくくする
- ・屋根:天井ボードの上に断熱材を敷く
ただし、天井ボードの上に新たに断熱材を敷きますと、例えば冷房設備の無い工場内や倉庫内の場合、魔法瓶と同様の原理になり、夏場はかえって暑くなってしまう可能性があります。日中に蓄えられた熱が夜間に屋外に放出されなくなるからです。
その場合、屋根に遮熱塗料(太陽光反射塗料・高日射反射塗料)を塗布しますと、その弊害を回避することが可能です。
(太陽光パネルを屋根全面に隅々まで設置している場合は、塗装不要です。)
弊社では、スレート屋根と外壁の断熱に「リリーフ工法」を実施しています。
リリーフ工法は、工場や倉庫などのスレート屋根や外壁を二重化する工事です。
導入に巨額の費用がかかる空調設備工事に比べてはるかに低コストに抑えられます。
また、雨漏りや錆腐食の対策も兼ねることができるうえ、外観が新築のように一新することにより企業のイメージアップにもつながります。求人活動が有利になったり、従業員のモチベーションアップになったり、周辺住民や工場見学者、お取引先に好印象をもたらす効果もあります。
リリーフ工法においても新設屋根下に断熱材を貼ることでさらなる冬場の保温性を強化でき、その場合は新設屋根上に遮熱塗料を同時塗布することにより、冬も夏も快適に過ごすことができます。
リリーフ工法についてはこちらで詳しく解説しています。
そのほか、窓については窓フィルム工事も行っています。
・ECOマドッチ:https://kankyo-shiroki.com/dr/ecomado.php
冬の寒さ対策は、建物の構造や立地条件、窓ガラスの面積などによって使い分けるのが理想です。
その建物に最適な対策を実施して、冬の寒さを快適に乗り切りましょう。
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